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>新作扱いの乙恭司、改めて楽しませて頂きました。個人的にはこの先も読んでみたいと思いました(w)
シズルも恭司に好意を持ち出したりしたらナツキよりも某トゥモエさんに恭司が命を狙われるのでは(w)
でもそんな展開がみたいなとか思ったり(w)。他の作品も頑張ってくださいね。全部に期待しております

コメントありがとうございます!
なるほど、と思いました。ということで、続きっぽくしながら、そんな展開を少しだけですが書いてみました。





 サーと広い場所のモップ掛けを終え、次は雑巾を手に取る。
 乾拭きで、機器に積もった埃を丁寧に拭っていく。この時は、機器から延びたコードに注意を払うことが必要だ。

「……よし」

 並び立つ計器の掃除が終了。重要な機械は触ることが許されていないから、今日の仕事はここまでだ。

 俺は今、ガルデローベの地下研究所にいる。
 元いた世界 (こう言っても、まだ信じられない思いがあるんだけど) に戻るための方法を模索する毎日だ。
 タダで居させてもらうのも悪いから、俺はこうやってココ――地下研究所の掃除や雑用をしている。

「高村くん、お客さんよ」

 声に視線を上に向ければ、ヨウコ先生 (←ガルデローベの生徒がそう呼んでいた) が指で入り口の方を指していた。
 俺に客。
 誰かなんてだいたい予想がつく。俺がここにいると知っている人自体、少ないのだから。

「はい」

 声を返しつつ、雑巾とモップを片付ける。そして、入り口へと足を向けた。
 地上からこの地下研究所に降りてくるためにある階段。その終着点で、薄紫色の服を纏った女性の姿を見つける。

「シズルさん、どうかしました?」

 駆け寄って、尋ねた。
 すると、シズルさんは穏やかに微笑む。

「様子を見に来たんどす。なんやえろう頑張ってはるて聞いて」
「はは、まぁこんな事くらいしか出来ないですから」

 もうだいぶ慣れたけど、まだシズルさんと静留が重なることが多い。
 以前、静留の面影を求めてじっと見つめてしまって、学園長に 「おい、何を見つめてるんだ貴様は」 と、言われた。その上 「シズルに惚れるな」 と釘を刺された。
 それは誤解だ。

「調査の方はどうなんどす?」
「ヨウコ先生が協力してくれてるんですけど、まだ何も」

 俺のことばかりに構ってられないから、これは仕方ない。

「そうどすか」

 シズルさんは目を伏せる。若干、憂いのようなものが見えて、こう、抱きしめたいような感情が湧き上がってきた。
 だけど、そんなことはダメなわけで……。

「シズル、ここにいたのか」

 上から声。そして階段を下りてくる靴音が聞こえて、俺は顔を上げた。

 ガルデローベ学園長、ナツキ・クルーガー。彼女は階段を下りて、近づいてきた。

「ナツキ、どないしたん?」
「ちょっと相談したいことがあって、少しいいか?」

 俺に一瞬だけ目線を向け、学園長はシズルさんに訊く。
 雰囲気から、ここではできない話だと思った。何か仕事に関わることか。

「ええよ。恭司さん、また来るさかいに」
「はい、シズルさん。あ、学園長、俺ちょっとだけ外に出たいんだけどいいかな?」

「ああ、構わない。って、なんで私は 『学園長』 なんだ。しかも丁寧語じゃないってどういうことだ。恭司、私とシズルをわざと区別してないか」

 鋭い。まぁ大した意味はないんだけどな。

「そんなことないって」

 そう言ったけど、不満そうな、納得がいっていない顔をされた。

「……まぁいい。シズル、一緒に来てくれ」

 よほど急ぎの用なのか。学園長は身を返した。シズルさんを連れて、降りてきたばかりの階段を上がっていく。
 俺はその姿を見送った後、ヨウコ先生に外出してくることを告げた。




 外に出ると、爽やかな香りを運ぶ風が肌や髪を撫でた。頭上に広がるのは一面の青空。日差しが温かく降り注いでいる。

 校舎や建物から離れた人気のない場所に、俺は立っていた。

 ガルデローベは乙HiMEを養成する専門学校。異性交際――恋愛が禁止されていて、女性ばかりの場所だ。
 そんな所だから、俺の存在はあまり知られていない。 (一部の例外を除く)

 一応、外――地下研究所の外に出る時は学園長かヨウコ先生に許可をもらって出ている。ガルデローベの外に出たことはまだない。

「さて、と……」

 茂みを掻き分けて入った奥まった場所で、片膝を大地につき、そっと息を吐いた。胸に手を当て、自身の中にある熱を感じる。
 それは、俺と一緒にこの場所に来たものの熱だ。

「清姫」

 喚ぶ。HiMEのようなものとは違う。……と思う。

 一瞬だけ、胸の内が熱くなる。不快感はなく、むしろ心地いい温かさが全身に広がり、やがてゆっくりと熱が収束していく。

 みー

 と、か細い鳴き声が聞こえた。
 俺の目の前――大地の上に、小さな清姫が現れる。大きさは手のひらくらいで、あの巨大な身体はそこにはない。
 顎を開き、紅い眼で睨めば誰でも身を竦める恐ろしさの面影はなく、「みー」 と鳴くただの小さな複頭の蛇だ。

「よしよし」

 手を差し出すと、清姫は嬉しそうに擦り寄ってくる。
 清姫がどうしてこうなっているのか、そもそもどうして俺が清姫を喚べるのか。分からないことは多いが、俺は安堵を覚えていた。

 清姫がいるということは、静留はきっと無事だ。
 だから、大丈夫。

「大丈夫だよな、清姫…」

 みぃ

 鳴き、首を持ち上げて、清姫の紅い眼が俺を見る。

 と、ガサッと音が背後から聞こえた。その音に俺が振り返るとほぼ同時に、ガサッと再び音が生まれ、そして茂みから頭が突き出てきた。

「あっ、やっぱりここにいた!」

 ガサガサと茂みから出てきた少女――アリカ・ユメミヤは、俺と清姫を見てそう言った。コーラルの制服に葉っぱを付けたまま、近づいてくる。

「ユメミヤ、また来たのか」

 以前、俺がこうやって清姫を遊ばせている時に出会った少女。天真爛漫な彼女は、俺と清姫を見てもそう驚くことはなかった。

「うん。清姫ちゃん、おいで!」

 ユメミヤが両腕を広げる。
 俺に擦り寄っていた清姫は、その呼び声に反応した。体を撓らせると、(巨体だった頃には信じられないが) 跳んだ。
 ユメミヤの元に一直線、綺麗な放物線を描いて飛び込んでいく。

「キャーッチ、と」

 清姫を上手く抱きとめ、ユメミヤは笑う。

「清姫ちゃんは可愛いなぁ」

 本来の大きさの清姫だったら、どう言うだろうか。案外、この子だったらそれでも可愛いというかもしれない。
 小さな清姫の前で、ユメミヤは指を振る。動きにつられるように、清姫は頭を左右に振った。少女と蛇の不思議な戯れ。

 そのまま、戯れはしばらく続き……

「あ、そういえば」

 と、ユメミヤが俺を見た。

「ユメミヤじゃなくて、アリカって呼んでって言ったのに」
「ああ…そういえば、そうだったな」

 ここはそういう名前で呼ぶのが風習というか、当たり前なんだよな。こればかりは、すぐに慣れるのは難しい。
 俺が唸っていると、

「アリカー!」

 遠くから、ユメミヤ……アリカを呼ぶ声が聞こえてきた。

「あっ、ニナちゃんだ」

 アリカは立ち上がると、後ろを振り返った。そうした後、再びこちらを向き、抱いていた清姫を俺に手渡した。

「あたし行かなくちゃ。またね、清姫ちゃん」

 バイバイと清姫に手を振り、俺にも別れを告げて、アリカは颯爽と茂みに突っ込んでいく。ガサガサと葉が擦れる音が遠くなり、やがて聞こえなくなる。

 その後も、しばらく俺は清姫と過ごした。




 一人で茂みから出て、辺りを見回す。
 よし、誰もいないな……。

「恭司さん、こんな所におったんどすか」

 声に振り向けば、シズルさんが立っていた。

「ああ、すいません。捜させちゃいましたか」

 俺がそう言うと、シズルさんは少し表情を変えた。

「何え……うち何かしました? 恭司さん、初めて会うた時と話し方が違いますやろ。それに、態度も少し」
「そ、それは……」

 シズルさんと静留。その違いを自分の中で明確にするために、口調は変えている。態度は……シズルさんと親しくしていると、どうしても静留を思い出すから、ある程度の距離を取ってしまっているのかもしれない。

「あんなに強う抱きしめられたのは、うち初めてやったのに」

 顔を背けて、目を伏せる。
 だ、抱きしめたって……ああ、最初に会った時のことか。

「あ……えー、その……」

 唸る。
 困った。こういう状況は、どうしたらいいのかわからない。

 と、ふふと笑い声が聞こえた。

「堪忍なぁ。恭司さんの表情が面白いほど変わらはるから。せやけど、口調は…ナツキも気にしとるさかいに」
「ぁ、わかり……わかったよ」

 返事をすると、にっこりと穏やかに微笑むシズルさん。

「恭司さん、うちは今から少し仕事があるんよ。それでここを出るんやけど、一緒に行きません?」
「え…?」
「ここから出たことないですやろ。何も知らん状態で街に一人で行かせるわけにはいかんのやけど、うちが一緒やったら大丈夫やから」

 街。
 街か。確かに少し興味はある。

「いいのか?」
「あかんのやったら誘いませんやろ」

 それはそうだな。
 俺は 「じゃあ、よろしく頼む」 と言った。




 シズルさんと並んで歩く。
 改めて見ると、ガルデローベというこの学園は本当に広い。緑も豊富で、整備も行き届いている。
 巨大な門扉に着くまで、かなりの時間を要した。

「ここからは、学園の外どす」

 シズルさんが言う。俺は、ああ、と頷き、

「?」

 背後から、視線を感じた。思わず後ろを振り返るが、誰もいない。

「どないしはりました?」
「いや、何でもない。大丈夫だ」

 前を向く。何だろうな、たぶん気のせいだとは思うけど。少し首を捻る。……まぁいいか。
 そう思って、歩き出した。





 木の陰。
 彼女は、偶然にも見てしまった光景に歯噛みした。普段隠している眼光の鋭さを晒し、顔を歪めている。

「何かしら、あの男は……」

 彼女の愛するお姉さまの傍にいた男。その男の存在に、彼女は静かな暗い炎を胸の内で揺らす。

「あの男も邪魔ね…」

 コーラルの制服を身に纏っている少女は、フフと口角を上げて微笑んだ。
2008.05.09 Fri l SSネタ l COM(0) TB(0) l top ▲

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