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いっそ書き直してしまいたいが、これに時間取られるわけにもいかなかったり……。
 日曜日。
 空は青く晴れ渡っていて白く棚引く雲がゆっくりと漂っている。穏やかな風が、さわさわと緑の葉を揺らしていく。
 風華学園、女子寮――その隣 『共同生活のためだけに建てられたもの』 で。


「恭……」

 淡い色のカーテンの隙間から、日の光が室内に射し込んでいる。そこに、少女の掠れ声が溶ける。

「恭司、さん……」

 鴇羽舞衣はベッドの上で、双眸に天井を映していた。
 彼女の顔は、ほんのり赤い。パジャマの上着のボタンが上から胸元まで外れていて、外気に晒されている肌には汗が浮かんでいる。

「……舞衣」

 高村恭司は応えるように名前を呼んで、手を伸ばした。舞衣の前髪に触れて、髪を耳の後ろへと流す。
 そして、露わになった額に手のひらを落とした。



 共同生活5日目 : 看病する側・される側



「やっぱり熱があるな……」

 呟き、恭司は額から手を離す。舞衣を見ると、弱った光を宿した瞳で見返してきた。

「大丈夫だから。……ん……風邪、なんて……らしくないよね……」


 今朝のこと。
 早くから美袋ミコトの姿はなく、玖我なつきは藤乃静留に呼ばれて出ていた。杉浦碧は仕事に学園に行き、自然、恭司と舞衣しか居ない状態だった。
 そんな中、舞衣の体調不良に恭司は気づいた。

 そして、現在へと至る。


side恭司

 冷やした方が良いな……。ええっと、水…いや、氷か? とにかく、冷やすものがいるな。
 立ち上がって、キッチンに向かう。
 五日も暮らしていると、何がどこにあるのかほぼ把握できている。いや、把握できていないと困る。冷凍庫の扉を開けて……

 氷は――足りないか。仕方ない、水だ。
 扉を閉める。そして、洗面器とタオルを取ってきて、洗面器に水を張った。張った水にタオルを浸して、舞衣の元へ歩く。

「恭司、さん……」

 悲しいほど掠れた声が、舞衣の唇から小さく紡ぎ出される。それに応えながら、ベッドの傍らにある椅子に腰掛けた。

「熱は?」

 訊くと、舞衣はこちらに手を伸ばして、握っている体温計を差し出してきた。受け取って、表示された数値を見る。
 熱はある。けれど高いわけではない。……酷いのは喉、か。

 近くの台に洗面器を置いて、水気を含んだタオルを絞る。その後、濡れたタオルを舞衣の額に乗せた。

「あり、がと……恭司さん」

 冷たさが心地いいのか、若干、表情を和らげる舞衣。そのまま、瞼を下ろして眠り始めた。

「……おやすみ、舞衣」

side out


 数時間後――意識が、浮上する。


side舞衣

 ……あたし、眠ってたんだ……。どれくらい、かな……? ダメだ、何か頭が回らない。
 目を開いて、ただぼうっと天井を見続ける。と、

「舞衣……? 目、覚めたか……?」

 少し遠慮しているような声が聞こえた。聞こえた方――左、ベッドの傍――に首を動かして目を向けると、恭司さんが座ってた。

「恭司さん……」

 ずっと、いたのかな? タオル冷たいから……傍にいて、換えててくれたんだ。

「舞衣、食欲はあるか?」

 食欲かぁ……正直、あまりない。でも、何か胃に入れておいたほうがいいわよね……薬、飲まないといけないし……

「……少しだけ、食べる」

 あ、今、ちょっと嬉しそうな顔した。……多分、作ったんだ、匂いがするし。

 恭司さんは立ち上がって、キッチンの方に行ってしまう。それを何となく目で追いかけると、壁に掛かった時計が留まった。
 長い針と短い針、どちらも上の方を指している。お昼……か、そうだよね。

「俺が作ったお粥だから、美味しくないかもしれないけど……」

 恭司さんはそう言いながら、キッチンから戻ってきた。看病するために置いている椅子に座る。

 あたしは普段より重く感じる身体を起こした。
 すると、恭司さんはスプーンでお粥を掬うと、冷ましてから、こっちに差し出してくる。……って、これ…え……あの……いや、風邪ひいてるからって、じ、自分で食べられるのに。

 別の意味で熱が上がる。

「……? どうした? あ、もうちょっと冷やした方が……?」

 しかも恭司さん気づいてない。
 鈍いっていうか、あたしのこと子ども扱いしてるような感じがする。

「えっと、これでいいか?」

 せっかくの厚意、なわけだし……。うん、ここで断るのはちょっとね。よし。――意を決して、差し出されたお粥を口に入れる。

「……おいしい」

 ぽつりと呟くように言ったら、恭司さんは嬉しそうに (それでもどこか照れくさそうに) 微笑んだ。


side out


 昼間眩しく輝いていた太陽が地平線に沈みながら、空を赤く染めるほど真っ赤に燃えている頃。恭司はドアが開く音を耳にした。
 続いて、

「ただいま~。いやー重かった重かった。……あ、恭司くん、舞衣ちゃんは?」

 スーパーの袋を2つほど持って帰ってきた碧は、見つけた恭司に声をかけながら袋をテーブルの上に置いた。

「ほら、栄養ドリンクも買ってきた」

 碧に続いて、なつきも薬局のものらしき袋をテーブルの上に置く。恭司は二人が置いた袋の中を漁りながら、碧に応えた。

「熱は下がりました。けど、まだベッドで休ませてます。今日一日、安静にしてた方がいいと思いますから」
「うん、そうだね。舞衣ちゃん今、起きてる?」

 その言葉に、恭司が 「起きてますよ」 と言うと、碧は片付けもそこそこに舞衣のところへ様子を見に行った。
 それを止めるでもなく、恭司となつきは袋の中をガサガサと漁る。

「恭司、栄養ドリンクはいいんだが……薬は必要なかったのか? あと、冷やすものとか」
「ああ、それは――」

 答えようとした直後、再びドアが開かれる音が聞こえた。そして、それに重なるのは足音。

「ただいま。恭司、薬だ。ちゃんと言われたとおり買ってきたぞ」

 いつもより騒がしくせずに駆け帰ってきたミコト。彼女の手には、小さ目の袋があった。

「おう、ミコトは偉いな。それは舞衣に持っていってくれ」
「ん、わかった」

 頷きながら返事をすると、ミコトは舞衣 (+碧) の元へと駆けていった。

「……さて、と。あっちはひとまず碧先生に任せて。なつき、今夜は俺が夕食作るから……まぁ、できる範囲で手伝ってほしい」
「ああ分かった。って、お前、私を馬鹿にしているのか?」

「不安だよなぁ。俺は舞衣みたいにカバーできないだろうし……」
「ちょっと待て! 聞き捨てならないぞ、それは!」


続く。
2008.10.05 Sun l SSネタ l COM(0) TB(0) l top ▲

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