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短いので、3日目と4日目はセットで。
 共同生活3日目 : 挑戦! そして恥ずかしの……


「恭司くん終わったの? そか、今日は先に帰っていいよ。あたし、もうちょっと仕事残ってるからさぁ」


 ――という杉浦碧の言葉があって、高村恭司は現在、一人で家までの道のりを歩いていた。もちろん、家とは共同生活している女子寮のことだ。

「涼しくなってきたな」

 恭司は空を見上げて、ぽつりと呟く。
 夏がどんどん薄くなっていき、日に日に秋の気配が濃くなっていく。もう少しすれば、目に見えて秋だと実感できる紅葉の時期が訪れるだろう。

「秋、か……」

 澄んだ赤に彩られた空から目を離し、視線を水平へと戻す。すると、女子寮――その隣、HiMEたちと暮らしている建物が見えた。



 ドアを開けて入ると、恭司は漂ってくる香りに気づいた。その香りに誘われるように、キッチンへと向かっていく。

「ただいま」

 恭司の予想通り、そこには夕食を作っている鴇羽舞衣の姿があった。加えて――

「――なつき?」

 エプロンを身に纏い、包丁を手に、まな板の前に立つ玖我なつきの姿もあった。目が合った彼女の頬は、赤く染まっていた。

「な、なんだ!? 私がココにいたらおかしいか!?」
「いや……そんなことは……。ただ、あまりにも意外だったから」

 恭司は言いながら、思った。エプロン姿もかなり似合う、と。事実、エプロンはなつきをより可愛くさせている。

「じ、ジロジロ見るな! お前はあっちに行ってろ!」

 恭司の視線に気づいたのか、なつきはぷいっとそっぽを向くと、中断していた料理を再開した。

「ああ、わかったよ」

 邪魔になるのならば退散するべきだ。恭司は 「なつき、しっかりな」 と言って、自分の場所 (ベッドの方) に向かった。

(なつきが料理か……。……まぁ……うん、舞衣がいるから大丈夫だろう)

 恭司は多少の不安を抱えながら、鞄を置いて、右手でネクタイの結びを緩める。

「恭司さん」

 背後から呼ばれて振り返る。そこには、制服の上にエプロンをつけた舞衣が立っていた。

「碧ちゃんは? 一緒じゃなかったの?」
「まだ学園で仕事があるってさ。もうちょっとって言ってたから、夕飯には帰ってくると思うけど。舞衣の方こそ、ミコトは?」
「ミコトは、ミケと乱丸 (どちらも猫。名付け親はミコト) と遊ぶって言ってたわ。夕飯には帰るって」

 と、なつきがキッチンの方から顔を出した。

「舞衣、ちょっと来てくれ」
「あ、うん、分かった」

 なつきに応え、舞衣は恭司に 「夕飯、期待しててね?」 と言うと、キッチンへと戻っていった。
 恭司は夕飯までの間仕事でもしようと鞄を開いた。



「おぉう、今日はすごいなぁ。なんかちょっと豪華だし、いつもと感じが違うね。仕事切り上げて帰ってきて正解!」

 テーブルの上に並べられた夕飯を見た瞬間、帰ってきたばかりの碧は鞄をベッドの上に放り出して素早く椅子に座った。

「本当に、すごいな…」

 恭司も目の前の料理に素直に驚いていた。期待しててね、舞衣がそう言うだけのことはあると思う。
 恭司の右隣に座っているミコトも、もう待ちきれないという風な感じで落ち着きがない。

「これで、最後! じゃあ皆、食べようか」

 舞衣は皿を置いて椅子に座ると、言った。

 次の瞬間、 「いただきます」 の声が五つ、重なる。

「いや~連日言ってるけど、おいしい! 本当においしいよ!」

 碧はべた褒めつつ、勢いよく食べていく。その斜め向かいで、ミコトは碧など比較にならない速さでご飯をかき込んでいた。

「確かに美味い――」
「恭司」

 呼ばれて、恭司が隣を向くと、なつきが見ていた。彼女は何か言いたそうに口を開き、何も言わず……結局、閉じる。

「ん。なつき、どうした?」
「…………」

 なつきは赤い顔で恭司を見ていたかと思うと、急にぷいっと顔を逸らして、恭司に箸を向けた。その箸先には、おかずが一品、挟まれている。

(こ、これは……)

 少し違うが、これは 『あ~ん』 というやつだ……と、恭司はなつきの行動の意味を正確に理解した。理解したが、

(やる、のか……?)

 これからのことを想像して、赤面する恭司。だが、このおかずは多分なつきが作ったものなのだろうと分かる。

(や、やるしか……)

 恭司は恥ずかしさなど捨てることを選び、決死の覚悟を決めて、目の前のおかずを口に入れた。もぐもぐと、咀嚼する。
 その行動に、顔を逸らしていたなつきは恭司を見た。

「……ん。うん、美味いよ、なつき」

 飲み込み、恭司は笑顔で本心を言った。
 刹那、なつきは耳まで赤く染まった。そして 「あ、ありがとう……」 と、目を伏せて呟くように礼を言う。

「――恭司くん恭司くん! あたしもあたしも、食べさせてあげるよー。はい、あ~んして?」
「恭司! 私は恭司に食べさせてもらいたいぞ!」

 恭司となつき、二人のことを周りが静かに放っておくことはなく、碧が身を乗り出し、ミコトが恭司の腕を引いた。

「え!? は、いやちょっと待――」

 今夜、恭司が胃の許容量の限界に挑戦させられたのは言うまでもない。




 共同生活4日目 : 恭司、学力向上のお手伝い


「やー、恭司くんと一緒に帰りたいよー」
「嫌じゃないでしょう碧先生。仕事なんですから、さぁ、大人しく一緒に来てください」
「しくしく、恭司く~ん」

 風華学園、社会科準備室の扉の前。
 教務の迫水に連れて行かれる碧。恭司は彼女を見送るしかなく、今日も一人で帰ることとなった。

(大変だなぁ……)

 他人事なので、 「頑張ってください、碧先生」 と心の中でエールを送り、恭司は踵を返す。と、ぶつかった。
 いや、ぶつかられる形で、抱きつかれた。

「恭司」

 最早、それに慣れ始めていた恭司は驚くことなく、抱きついてきたミコトの衝撃を受け止めた。

「ミコト……あれ? 舞衣はどうした?」

 大抵の場合、ミコトは舞衣と共にいる。特に、登下校はいつも一緒だ。その舞衣の姿が、辺りには見当たらなかった。

「ん、舞衣は寮にいる。私は奈緒と勉強の予定があったから、先に帰ってもらったのだ」
「……勉強」

 気になった単語を繰り返してみる。そうして、恭司は思った。ミコトが勉強している姿は見たことがない、と。

「恭司、だから私は恭司と一緒に帰る」
「ああ……そうだな、一緒に帰るか」



「よしっと」

 舞衣は夕飯の下準備が一区切りついたところで、満足げに頷いた。と、背後から聞こえた音に、振り返る。

「ただいまだ、舞衣!」

 声と共に、舞衣の胸にミコトが飛び込んでくる。舞衣も慣れたもので、その衝撃を上手く受け入れた。

「おかえりミコト、恭司さんも」

 ミコトより遅れて帰ってきた恭司に目を向けると、彼は 「ただいま」 と言って微笑んだ。

「舞衣、私は今から恭司に勉強を教えてもらうんだ」

 嬉しそうな声で言うミコト。恭司は 「まぁ、そういうことになった」 と、笑っている。

「ミコトが、勉強……」

 呟いて、舞衣は考える。それは恭司が思ったこととほぼ同じ、ルームメイトの時から、ミコトが勉強している姿は見たことがない、だった。

「ん、恭司、始めるぞ」

 ミコトは舞衣から離れると、恭司の手を引いて机――食卓――に向かった。


 勉強開始から、数十分後――


「え、ほ、ホントに? ミコト、あんたコレ全部覚えてるの!?」

 室内に、舞衣の驚愕の声が広がっていった。彼女が手にしているのは、風華学園中等部3年の数学の教科書だった。

「うむ、覚えてるぞ。本は一回読めば覚えられる」

 衝撃発言だった。
 ミコトは常識は欠けているが、頭は悪くない。というのが舞衣の評価だったが、まさかここまでだったとは。

「そうみたいだな。じゃあ、覚えてるだけでは解けないものを教えることにしよう」
「うむ!」


 更に、一時間ほど後――


 恭司は、ミコトの能力に驚いていた。
 ミコトは言われたことや行ったこと、そのことから得たことなどをどんどん吸収していった。完成した理解へはまだ時間が必要だが、成長速度は特筆すべきものがある。

「……」

 ミコトは黙々とノートに文章を書き連ねていく。恭司は口を出す必要がなくなっていた。

「……ん。恭司、できたぞ!」

 喜色満面で、ミコトは恭司にノートを見せた。それを見て、

「ミコトは本当にすごいな」

 恭司の口から、賞賛の言葉が出る。言葉だけでなく、恭司はミコトの頭を撫でることで更に褒めてやる。
 それに、ミコトは嬉しそうに笑った。

「恭司のおかげだ。恭司、私は恭司が大好きだぞ!」 ――がばっと、ミコトは正面から恭司に抱きついた。



続く。
2008.10.04 Sat l SSネタ l COM(0) TB(0) l top ▲

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